県西地区や近隣の県では、節分を終えた2月の初午(はつうま)に「すみつかれ」を作る風習があります。
地域によって、すみつかれ・しもつかれ等呼び名が異なりますが、基本的には同じ郷土料理です。
先月「明るい食生活」という、全国で栄養改善普及活動を行う団体の機関紙を読んでいたら、酒粕を使った茨城の「すみつかれ」が紹介されており、新年早々驚きました。
この季節になると毎年、ご近所・親せき・友人からそれぞれの「すみつかれ・しもつかれ」を頂き、具材や味の違いで話がはずみます。今年は、88歳の叔母に教わりながら、家族みんなで「すみつかれ」を作りましたので、御紹介いたします。
魚の頭は下茹でし、前処理をしておくのがコツで、隠し味に砂糖少々、みそ味に仕上げるのが我が家流です。
水を全く入れず、野菜の水分だけで煮つめるため、栄養や旨味が濃縮され、とても美味です。
昔から「7軒分のすみつかれを食べると健康でいられる」と伝えられ、多くの家が「頂いて、差し上げて」の習わしを続け、地域の人々とのつながりを大事にしてきました。
結城市出身の免疫学者である多田富雄教授も、一家団欒に着目し、「すみつかれ」が平安時代から伝わる由緒ある食べ物であると同時に、庶民の知恵がつまった優れた食べ物であると述べられております。
すみつかれ・しもつかれの材料
おろし作業
煮ている
具の近接
すみつかれ・しもつかれの完成
「社会的なつながりを持つこと」は、精神的健康、身体的健康、生活習慣、死亡リスク等によい影響を与えると報告されており、厚生労働省の政策でも「地域の人々とのつながりの強化」が、肥満やタバコ対策と並ぶ予防・健康づくりの指標になっています。
また、内閣府で報告された「地域の経済2019」でも、「困難な時に助けてくれる隣人がいること」は主観的健康度を上げてくれる大事な地域資源のひとつとされています。
研究や論文等によるエビデンス(根拠や裏付け)といったものがなかった時代の人達は、経験や言い伝えで「社会とのつながりが、健康になるための秘訣である」と分かっていたのかもしれません。
郷土料理のすばらしさは、味や栄養だけでなく、こういった先人達の気づきや教えにあるように思います。
今、茨城県では、結城市では、「地域の人々とのつながり」はどうなっているのでしょうか。つながりがある健康度の高い地域は、総生産も高い傾向にあります。
支え合い・助け合いながら、他者を受け入れて共存し、孤立・孤独を防ぐ、そんな地域であってほしいと願っています。
多田富雄 すみつかれ 落葉隻語
*リンク:健康日本 21(第三次)推進のための説明資料(案)
*リンク:内閣府 地域の経済2019